ごぶごぶごぶの日記

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「ダンケルク」レビュー

これまでフィクションしか描いてこなかった、クリストファー・ノーランが初めて描く戦争映画。というか彼が事実を描くこと自体が初めてだったとは、言われてみればそうなんですね。ジャンル的にオカルト、ファンタジー、ヒーローものに限定されていたことに改めて気づかされます。

第二次大戦の始めあたり、英仏蘭の連合国軍が劣勢の戦況のなか、フランスのダンケルク海岸に追い詰められた40万人の兵士たちが軍用船、民間船でイギリスへと逃げ切ったという事実に基づいた脱出劇の物語。

市街地から海岸へと抜け、たどり着いた海岸から本国へ脱出しようとする若い英国陸軍兵士の1週間。イギリスからドーバー海峡を渡り、兵士たちの救援に向かうある民間の観覧船の1日。撤退する兵士を輸送する駆逐艦を上空から援護するイギリス空軍戦闘機パイロットの1時間。

この3つのエピソードを106分で描くという作品です。

冒頭からいきなり兵士が機関銃で打たれて死にそうになるシーンから始まり、耳を突き抜けるような銃声と空から降ってくる爆音で、観ている自分がそのままダンケルクの戦場へと放り出されたような恐怖に晒されます。

3つの物語が最後にひとつのシーンへと交錯していくという構成の妙はやはりこの監督のなせる技で、時間軸がバラバラなようだけど、ある一点に向かっていく幾つかの端緒を見つけるたびにハッとさせられました。

これまでのノーラン監督の作品はほぼ観ていて、ハズレがなかったので「ダンケルク」も必ず観に行こうと決めてました。しかもコレまでに描いたことのなかった事実を題材にした作品で、さらにそのジャンルが戦争映画だとは。

ノーラン監督はイギリスアメリカの両方の血を分けた人物で、映画監督としてあの大戦について自分なりの表現をしてみたかったのでしょう。

アメリカという国はあの大戦以降も、途切れることなく世界中で戦争をしている国。

例えば自分の家族や親戚や友人が戦争によってその命を脅かされるかも知れないという危機意識が無意識に意識されているという感覚が国民の中にあって、だからこんな映画をつくる監督が生まれてくるのだろうな、って思うんですよね。リアルに戦争(国民国家のリアリズム)に向き合ってるから過去と現在の戦争の検証を行うことを繰り返す素地があってそれを表現する監督と世界に発信する環境が整っている。

それに翻って日本映画というと。。恋愛、ファンタジー、オカルトものばかりで、劇中前の予告編を見てるとこの国は大丈夫なのかな。。って頭痛がしてくる。

それが平和だと言えるのかも知れないが、「核の傘」とかいうおかしな幻想にしがみついて、国防に関しては70年来放置し続けている日本政府の有様をみてるとやっぱりなんだろうなあって思ってしまうんですよね。。

国民国家のリアリズムは、ボクらの前の世代が経験した悲惨な戦争によって燃え尽くされてしまったのでしょうかね、。

 

しかし、スピットファイアVSメッサーシュミットの空中戦は格好良かったな〜。。

 

 

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