ごぶごぶごぶの日記

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カズオイシグロ クララとお日さま 読書感想文

【クララとお日さま】 本読むの遅い方ですがイシグロさんの作品は何故か早く読み終わります。しかし読んでる間は集中して物語に魂を持っていかれてるような感覚がある。 「クララとお日さま」イシグロさんノーベル賞受賞以来の新作です。 舞台は近未来のアメリカ。AFと呼ばれる人工親友いわゆるAIのクララと病弱な少女ジョジーとの物語を主軸に展開します。 最新型AFではないが他の機体が持たないズバ抜けた観察眼と学習能力をもつクララは太陽の光を動力とし、同時にお日さまの力を万能の神のように崇拝している。 クララが仕えるジョジーは長くは生きられないほど病弱なのだが、彼女に献身的で純粋無垢な「ココロ」を持つクララはお日さまの力と自分を犠牲にしてその命を救おうと試みる。 ざっとあらすじを説明するとなんだかマンガやアニメチックな話で、子供の頃に読んだ星新一ショートショートみたいだが、イシグロさんなのでそこは違います。 現在にも通じる格差問題や、環境問題、財力や地位の違いによってうまれる差別とそこに露呈する人間の醜さ。そんなものが抑制の効いた美しい文体で描かれている。 イシグロさんの作品って2か3くらいしか書いてないんですよね。残りの8か7は読者が肉付けしながら読み込むというそんな印象を受けます。下手したら1ぐらいの時もあるし、読み終わった後は0になってあとはどう受け止めたか?みたいに答えを求められるような雰囲気がある。試されてるような。 そこが他の作家とは違い優れてる点だと思います。文体はシンプルでかなり読みやすいが、理解したつもりで読み進めても実は読みこぼしてるところが後になってわかったりする。難しいです。行間にいろいろ書いてます。 多分ぼくが読んで理解したつもりでいてもあと何年か後にイシグロさんがどこかのインタビューでこの作品について静かに口を開いたときに気付かされる事があると思うんですよね。 しかしとんでもない作品でした。イシグロさんの作品の中でもダントツでした。他の作家も含めてここ数年で一番良かったです。それだけは言えます。 その辺についてまとまったら改めて書こうとおもてます。

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