ごぶごぶごぶの日記

お金をかけない東京散歩ほか、走ること食べること思うことを書いてます

ビールストリートの恋人たち

久々の映画、久々のレビューです。

日比谷シャンテ、オシャレなミニシアターのシャンテはtohoに買収されてもシートの低さは変わらない。お陰で座高が高くやけに姿勢の良いおっさんの影が気になって仕方なかった。

「ビールストリートの恋人たち」

去年見た「ムーンライト」の監督がその撮影中に映画化の権利を獲得し、脚本まで書き上げたというから、かなりの思い入れがあったことが伝わってくる、そんな良い作品でした。

70年代ニューヨークの黒人貧民街。そこに住む主人公の婚約者にレイプ犯の容疑がかけられ、フィアンセはあえなく逮捕されてしまう。その無実を晴らすために主人公のヒロインとその家族が奔走する。という物語。

結局なんの良いこともない、救いようのない悲劇的なラストを迎えてしまうのだが、物語が大きく動くことはなく、そこへと至る一つ一つの出来事が克明に淡々と描かれていきます。舞台は70年代だけど、こういう話ってアメリカでは未だに繰り返されてるのだろうな。

淡々と、静かに、気高く。です。

この監督が描く黒人はなんて気高く美しいのだろう。そこにいつも打たれてしまう。映画のファーストカットで恋人二人が公園の石畳の道を仲良さげに降りていくシーン。紅葉の季節に生い茂るイチョウの葉を俯瞰から捉えてその下に歩く二人が姿をあらわす。カメラはゆっくりとダウンして淡い紅葉の色を背景に、鮮やかな青のワンピースを着た彼女と青いシャツを着た彼のバストショットへと落ち着き、褐色の肌から溢れる白い歯とリズムに乗って楽しげに歌いだすような言葉で会話が始まる。。

そんなシーン。何気ないカットなのだけれどその色彩感覚というか、やっぱり美しいです。素晴らしい!ムーンライトの時も月夜の明かりを受けた黒人の少年の顔の色が銀色に反射するシーンがあって、アレにはうっとり魅了された。

黒人は気高く美しい。その事をこの監督は主張したいんだろうな。黒人が置かれる社会の不条理や人権の主張を表現するもう片方で、彼の大きなテーマとして「黒人は美しい」という事を強く表現したいんだろうな、。って毎回思います。

次はどんな作品を撮るのだろう。次回作が楽しみな映画監督のひとりです。  

https://youtu.be/Dx1XtKbEtfE