ごぶごぶごぶの日記

お金をかけない東京散歩ほか、走ること食べること思うことを書いてます

15年たちますか

先日そいつが結婚式を挙げた式場の近くを車で通った時に、この世界からもういなくなったその表情や、いつも落ち着いた口調が印象的だったその声が思い出されてきました。それでそいつの身に起きたことをボクがボクらしくない様子で妻に熱っぽく話しているのは、あの記憶をなるべく薄く紛らわせようとする意思がそこにあることに気づくんですよね。

15年も経ちますか。何ごとにも飽きっぽく中途半端な性格のボクとは対照的で、明るく思いやりのある。なんというか、、ちゃんとした子でした。

もともとそいつとは祖父の代以前から親戚関係だったことを聞いたことがある。そのせいでボクらが生まれるより前から、当時若かった親同士の絆が深く、家族同然の付き合いをしていたことでボクらは幼馴染となり、同級生だったそいつとは川で遊んだり、夏は虫取りをしたり、花火をしたり、そうめんを食べたり、いろいろ楽しい時間を共に過ごしました。豊かな自然を背景によく遊んだ記憶。互いに 大人になり住む地域も離れていたので会うことはなくなったけど、実際に会えなくても記憶のなかではいつでも会うことのできるような、身近にいる人間のひとりだった。

34歳で2人の男の子に恵まれ、幸せに暮らしていたそいつは、たまたまケガで入院していた病室に、いきなり暴力団の男が侵入してピストルで頭を撃たれてあっさりと殺されてしまった。蘇生の甲斐もなく。前日に部屋を入れ替わったのは偶然だとされているが、それがただの偶然だったとしてもそこには疑念しか残らないのだが。暴力団抗争に巻き込まれ、ただの人違いで殺されてこの世を去ってしまったわけです。どういうわけか、そんなウソみたいな話がこの世では起きてしまうんですね。なんの仕業なのか、誰の差金なのか。ケガなんかして入院してしまったそいつに非があるわけでもなく、セキュリティに不備のあった田舎病院にその責任追求をできるわけもなく、ただの理由もない運命のほころびによってそんな末路となってしまった。とでもいうのだろうか。

東京にいたボクは事件翌日の朝に目覚めてからその事件を知った。

出勤前にぼけっと見ていたワイドショーでそいつの顔写真がテレビに大写しにされ、ボクは事件の経緯を伝えるキャスターの言葉をひとつひとつ冷静に理解するのだけれど、いつも通りの窓から差し込んでくる朝の穏やかな光がとても疎ましく、その静かな光がこの世のものとは思えないほどとても恐ろしく残酷で冷たいものに感じられた記憶が残っている。手が震えていた。めまいがした。こんな酷いことが起きてるのに朝はいつものように静かで穏やかであることが信じられなかった。すぐに実家に電話をし間違いなくそいつのことが報じられていることを確認していた。受話器越しの母の声を聞くと手の震えがだんだん収まっていく気がした。

獄中で死んだという犯人に対する怨みや憎しみやらその罪罰についてはなにも触れたくはない。それについては何も考えたくはないから。

それより、その一方でもしかするとそいつが殺されたあの瞬間から時空が捻じ曲がって別の世界が始まり、そこではそいつが今でも明るく生きていて、家族とこれまで通りの楽しい日々を生きているとなぜなのか想像することがある。

人は過去から未来への一方通行でひと通りだけの時間軸を生きていくという常識、認識⁈があるのだが、それを疑ってみることによってそいつがどこかで生きていることを思い描くことも人の想像力というか、そういうのも許されていいのかな。 なんてまるで現実にはありもしないSFか怪しい宗教なのか、なにか奇妙で危険な話なのかも知れないのだが、そんなことを考えたりします。

人は必ず死んでしまう。死んでこの世を去るとされてるが、なんらかの別の形で生まれ変わったり、別の時空で生きてると考えられなくもない。

これって危ない思想なのでしょうか、。でもそう考えるとその人がいなくなり、残された人が回避できない絶望感を少しだけずらすことができ、真正面から受け止めずに済むかも知れないというか。そういう考え方は人間の想像力によって唯一可能なことなのかも知れない。っていう不完全な妄想が湧き上がってきます。そんなバカな虚妄をそいつがどこかで聞いてたとしても、まるで理解してくれんとは思うけど。そんな性格でもないだろうし。

しかし、そんなことのためだけに人間には人間にしか持ち得ない想像力が備わっているというか。人の死を上手くかわすために想像力が残されているというか。

もう少しこの考え方を整理して悲しみにくれる人たちに上手に伝えられるといいのだけれど。

最近そんな新しいというか、変わった考え方を紹介する本を読んだもので。

今日は過ごしやすくあたたかい五月ですね。

 

https://www.yomiuri.co.jp/local/kumamoto/news/20221213-OYTNT50184/