ごぶごぶごぶの日記

お金をかけない東京散歩ほか、走ること食べること思うことを書いてます

海と毒薬

去年は「夜と霧」その前は「井上成美」。
夏のこの時期になると戦争に絡んだ本を読むことにしてます。それで今年は遠藤周作の「海と毒薬」でした。遠藤さんの作品は一時期ハマっていたこともあり、中でも映画化された「沈黙」や時代小説の「宿敵」が特に印象深く残っています。

それで「海と毒薬」なのですがね。戦中最大のタブーともされる、九州大学生体解剖事件を題材とした小説でした。実際にあった米兵捕虜を人体実験して殺害した惨い話です。戦争に絡んだ、、といってもこの作品の場合、背景に戦争が配置されてるだけで、それは小説の性格を色付ける黒い影のような存在でしかないようでした。それよりも人間の穢れた像というか救いようもなく奇妙な愚劣さのようなものがとてもよく描かれていた。
人物の心理描写については自身の感情を俯瞰してみる自分をさらに俯瞰するという、そんな表現の仕方は遠藤さん独特なもので味わい深くもある。
遠藤作品って読むのつかれる。でも同時にすごく惹かれます。疲れてくるから読み飛ばそうと文字の上っ面だけを追っていこうとしても、心が掴まれる感じがあり無意識にその深い意味までも読み取ってしまう変な感じがあります。うまく説明できないけど、。
そんな本でした。
来年は「戦争は女の顔をしていない」を読もうと思っています。

#海と毒薬

#遠藤周作

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