ごぶごぶごぶの日記

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侍女の物語↙︎マーガレット・アトウッド

NHKの番組でこの本が紹介され、とても面白そうなので即購入しました。

マーガレット・アトウッドの「侍女の物語」。

21世紀後半アメリカで起きた内乱の末に誕生した「ギリアデ共和国」がその舞台。地球環境は原発事故、大気汚染、核戦争の影響で土壌も大気も汚染されたディストピア。ギリアテ共和国の男たちは戦線を守るために〈天使〉と呼ばれる兵士と内政を司る司令官、〈侍女〉を保護する〈保護者〉に分けられ、女は司令官の〈妻〉と〈侍女〉の世話係の〈小母〉、司令官の子供を産むためだけに存在を認められる〈侍女〉に分けられる。侍女の名前は本名ではなく「オブブレッド」や「オブグレン」(〜の)といった男性の所有物とする名前に変えられ子供を産む機械としての存在でしかない。子供を妊娠しても死産や奇形児を産むと侍女としての地位は失われ汚染地域で強制労働を強いられる「コロニー」もしくは売春宿へと送られる。環境が汚染されているので死産や奇形児の出産の確率が高く、兵士〈天使〉として前線へ送り国を守ることができる男児の出産を侍女には求められる。国家が存立した時点でその区域に住む女たちの仕事や財産は没収され、各役割に選別され主人公の侍女は監視と恐怖に怯えながら生きていく。

訳本は作者の意図と翻訳者の捉え方に齟齬が生まれるので、うまくそこを自分が理解できたかは自信がないが割と時間をかけずに読み進むことができた。と思う。

執筆されたのが1985年のアメリカ。日本では90年の出版。80年代のアメリカ。日米貿易摩擦と冷戦期。大統領は緊縮財政により小さな政府を目指したレーガン時代でしょうか。アメリカンポップとハリウッド映画の極彩飾な時代。物語はそんな80年代の自由だったアメリカを懐古し慈しむシーンが印象的だった。

司令官は女たちに言う「私たちは女性を解放してあげた。着る服や生まれついての美醜、身分によって差別される女性個人の地位を平等に振り分けることで、男を得るための努力や差別から解放することができた。そのことをありがたく受け取るべきだ」まさにディストピアです。

本を紹介された番組のテーマが「フェミニズム」。それについて大学教授や評論家、NPO代表やタレントが討論する中でその一人がこの本を挙げて論じていた。あらすじの紹介がかなり衝撃的な内容だったので読んでみたのだが、その内容と感想を記しておきたくなった。

アメリカのトランプが支持した「中絶禁止」やイランの「ヒジャブ問題」タリバンの「女性への教育禁止」などが世界で問題化していて、この物語のような事態が現実化しないとは限らない。ようにも思える。

この作品は大ベストセラーにまでなったそうで、映画化もされている。しかしヒットはしていないようだ。日本語字幕版も出ていない。原作は面白いが映像化は厳しそうに思える。ソレ以前に観ようとも思わない。こんなグロテスクな話を目にしたくない感覚がある。

 

著者はそのような女性差別問題の現実化を受けて「侍女の物語」の続編を執筆しその本は2020年に発刊されている。

 

侍女の物語↙︎マーガレット・アトウッド